全身性エリテマトーデス (SLE) とは
自分の免疫システムが正常な細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫性疾患の1つで、全身の臓器に炎症や組織障害が生じる病気。
指定難病の1つであり、男女比は1:9。妊娠可能な女性に起こりやすく、女性ホルモンが発症に関与すると考えられている。
原因
原因は明らかではないが、遺伝素因に環境要因が加わり、複合的な要因で発症する自己免疫疾患と考えられている。
自己免疫とは本来、細菌やウイルスから身を守る免疫系が自分自身に対して起こる反応である。
遺伝的要因も発症に関与していると考えられているが、それ以外では性ホルモン、紫外線、ウイルス感染などの環境要因が関わって発病すると考えるのが妥当といわれている。
症状
悪化したときには発熱、全身の倦怠感など全身症状とともに多彩な症状が現れる。
皮膚症状
蝶形紅斑(バタフライラッシュ)は全身性エリテマトーデスに特徴的で、蝶形紅斑とは、顔に蝶のような形の発疹が出現する皮膚症状のことである。このほか、円板状に盛り上がった紅斑、光線過敏症や脱毛が半数以上の患者さんに認められ、痛みを伴わない口内炎が生じることもある。
関節痛や関節炎
特に病初期に頻度の高い症状で、左右対称に多関節に生じる。関節リウマチのように変形をきたすことはない。
腎臓に生じるループス腎炎
約半数の患者に、ループス腎炎と呼ばれる腎臓の病気が現れる。初期にはたんぱく尿など尿検査の異常だけで特に自覚症状はないが、進行に伴って顔や足のむくみが出現するようになる。腎臓に炎症が続くと徐々に腎機能が低下し、適切な治療がなされない場合には腎機能が破綻し、透析療法や腎移植が必要になることもある。
その他の症状
胸膜炎や心膜炎が発症したり、けいれん、精神症状、脳血管障害などの中枢神経が障害されたりすることもある。
検査・診断
血液検査が必須で、白血球や血小板の減少、貧血が認められる。また抗核抗体が陽性となる。疑われる場合には、さらに抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗カルジオリピン抗体などの病気に特徴的な自己抗体を確認する。
さらに、診断、重症度の評価のためには尿検査、画像検査、場合によっては病理検査や腰椎穿刺検査で、心臓・腎臓の障害、関節炎、胸膜炎、心膜炎、消化器病変、中枢神経病変など各臓器の障害の程度を調べることも重要。
治療
一般的な治療薬は副腎皮質ステロイドで、長期使用による副作用が懸念されるため、重症度に応じた用量の調節が重要。特に重症な場合には、副腎皮質ステロイドを点滴で大量投入するパルス療法が行われる。
また、副腎皮質ステロイドの効果を高めること、または副腎皮質ステロイドの減量を目的に免疫調整薬、免疫抑制薬、分子標的薬を併せて用いることがある。特にループス腎炎や中枢神経障害などの重症例に対しては初めから免疫抑制薬を併用し、これを軸として早期に寛解を目指す。