ウイルス性出血熱
エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱などの病気を指し、いずれも発熱や出血傾向を示し、致死率の高い重篤なウイルス性疾患である。ウイルス性出血熱は、主にアフリカを中心に流行をみる疾患であり、日本における流行はないが、国際化が進む現在の世界において、日本で同様の現象が生じることも考えられ、有事に備えての対策を行うことが重要であるとされている。
原因
ウイルスを媒介する動物や虫としては、エボラ出血熱であればサルやコウモリなどが、ラッサ熱はネズミ、クリミア・コンゴ出血熱では、ダニ、家畜である。
症状
ウイルス性出血熱は致死率が高い
感染後数日から3週間ほどの経過で、発熱や筋肉痛、倦怠感などが現れる。経過中に皮疹がでることもある。
また、皮下出血や消化管出血、目や口などの粘膜出血などが認められたり、重症の場合には血圧低下や意識障害などを呈することもある
治療
基本的には対症療法であるが、ラッサ熱に対してはリバビリンが有効であると言われている。
予防
徹底したスタンダードプリコーションが重要。手洗いを行うことも重要な感染予防策。
アフリカなど流行が疑われる地域では媒介動物や虫への接触を避けることが重要。
デング熱
原因
デングウイルスを持っている蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカ)に刺されることで感染する。人から人へ感染することはない。ネッタイシマカやヒトスジシマカは東南アジアや南アジア、中南米、アフリカなどの熱帯地域を中心に生息している。
ヒトスジシマカは日本国内においても確認されている。
症状
感染してから発症するまでの潜伏期間は、通常3〜7日。
・デング熱の症状
急激な発熱(多くの場合、2〜7日で解熱)
そのほかに頭痛・目の裏の痛み・関節痛・筋肉痛・吐き気・嘔吐
発疹は解熱後に出現し、胸部や胴体・背中からはじまり、手足・顔面に広がる
・デング出血熱の症状
鼻血や消化管出血など
そのほか不安・興奮状態、呼吸苦や腹部膨満感など
さらに重症な状況になるとショック状態や循環血液量減少性ショックなどがみられる
治療
基本は対症療法
重篤な場合は入院治療
予防
蚊にさされないことが重要
流行地域に行く際は、長袖、長ズボンを着用する、サンダルを避けるなど、肌の露出の少ない服装を心がける
ディートやイカリジンという成分が含まれている虫除けスプレーが有効
腸チフス
原因
腸チフスの原因菌はチフス菌で、ヒトにのみ起こる。
便や尿、またそれらによって汚染された手指や食べ物、水などを経口摂取することで感染する
腸チフスが流行する海外への渡航(東南アジア、中南米、アフリカなど)が感染のきっかけとなることが多いものの、輸入された長期保存できる食品がチフス菌に汚染されていた場合にも感染源となりうる
症状
潜伏期間は8~14日間
38~39℃の高熱で、稽留熱(1日のなかで体温の変化1℃以内)という熱型を呈する
下痢または便秘、バラ診(背中やお腹の淡いピンク色の発疹)や、肝臓や脾臓の腫脹がみられる
ときに腸の出血や穿孔を起こすこともある
治療
世界的に広く使用されている抗菌薬は、フルオロキノロン系
予防
予防方法は、徹底した手洗い
また、腸チフスの流行している地域に渡航した際には生野菜やフルーツ、生水や氷を喫食しないように心がける