Aオピオイド鎮痛薬・拮抗薬
・オピオイド受容体は、中枢神経、脊髄、末梢神経など体内に広く分布しており、μ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパ)の3種類がある
・それ以外にも様々な薬理作用がある(呼吸抑制作用、鎮咳作用、催吐作用、消化管運動抑制作用、胆道内圧の上昇、尿閉、縮瞳、掻痒など)
・おもに肝臓で代謝され、尿から体外へ排出される
1.レミフェンタニル
・μ(ミュー)オピオイド受容体に作用する
・添加物としてグリシンを含むため、硬膜外および脊髄くも膜下腔への投与は禁忌
・腎機能や肝機能の低下による薬物動態の影響はほとんどない
・血中からの消失が速やかであるため、投与中止前に鎮痛薬を投与し、適切な術後疼痛管理を施行する必要がある
・高用量投与による術後のシバリングや痛覚過敏などの問題が指摘されている
2.フェンタニル
・μ(ミュー)オピオイド受容体に作用する
・手術時の麻酔だけでなく、癌性疼痛にも使用され、静脈内、硬膜外腔、くも膜下腔に投与される
・作用発現は迅速で、作用時間は30分〜1時間と短いが、反復投与によって蓄積していく
3.モルヒネ
・癌性疼痛や、激しい疼痛時における鎮痛、鎮咳、下痢症状の改善、手術後などの腸管蠕動運動の抑制に使用される
・剤系や投与経路が豊富である
・硬膜外投与においては、水溶性なので拡散しやすく、硬膜外の穿刺部位から離れた分節にも鎮痛効果が得られる一方、呼吸抑制を生じる可能性もある
4.トラマドール
・μ(ミュー)オピオイド受容体に作用する
・癌性痛や慢性痛に使用されるほか、注射薬のみ術後に適応がある
5.ペンタゾシン
・κ(カッパ)オピオイド受容体に作用する
・心筋梗塞、胃・十二指腸潰瘍、腎・尿路結石、閉塞性動脈炎、胃・尿管・膀胱検査器具使用時における鎮痛、麻酔補助等で使用される
・くも膜下麻酔投与後の掻痒に対する有効性があるが、術後悪心・嘔吐の発生頻度が高く、他の鎮痛薬と拮抗する可能性があることなどから使用が限られている
6.ブプレノルフィン
・γ(ガンマ)オピオイド受容体に作用する
・癌性疼痛、心筋梗塞における鎮痛、慢性剤にも適応がある
・オピオイド受容体への親和性が高く、他のオピオイド鎮痛薬の受容体からの追い出し効果をもつ
7.ナロキソン
・オピオイド受容体において、オピオイドの作用を競合的に阻害することで、呼吸抑制を改善する
・オピオイドによっては、ナロキソンより作用時間が長いものがあるので、呼吸抑制の最初など注意が必要である
B非オピオイド鎮痛薬
・薬理学的に作用機序の異なる多様な薬物を組み合わせて使用することで、鎮痛効果の向上と副作用の軽減を目指す多角的疼痛管理(MMA)が重要である
・オピオイド鎮痛薬は強力な鎮痛効果をもつが、嘔気・嘔吐や食思不振、腸管蠕動運動抑制、過鎮静、呼吸抑制などの離床や機能回復を妨げる副作用が多いため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどのを併用することで、オピオイド鎮痛薬の使用量を最小限にすることが推奨される
1.NSAIDs
・プロスタグランジンを生成する酵素であるシクロオキシナーゼ(COX)を阻害することで消炎鎮痛作用を示す。
・手術操作の機械的刺激による侵害受容性痛や組織損傷部位における炎症性痛に有効である。
・COXにはCOX1とCOX2があり、COX1は胃粘膜の保護、血小板の凝集、腎血流維持に重要な役割を果たしている。COX2は炎症部位で誘導されて発現する。そのため、NSAIDsのCOX1阻害による副作用が問題となる。COX2選択的阻害薬は、消化管障害のリスクは少ないものの、心血管系の合併症が増加する。また、腸管手術においては、吻合部の抱合不全を増加させる可能性が報告されている。
・アスピリン喘息には禁忌である。
2.アセトアミノフェン
・作用機序は十分に解明されていない。NSAIDsと違い、解熱鎮痛薬である。
・末梢における消炎鎮痛作用は弱い。
・大部分は肝臓で不活化される。そのため、アルコール多飲患者や低栄養などグルタチオンが減少している患者では、肝障害に注意が必要である。
C各種鎮痛薬の投与量の目安
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