呼吸不全と高濃度酸素療法
呼吸不全とは、室内気でPaO2≦60(≒SpO2:90%以下)の状態で、高二酸化炭素血症の有無により、I型とII型に分類される。
I型呼吸不全はPaCO2が45以下で、II型呼吸不全は、PaCO2が45以上。
1型の原因は、換気血流不均等やシャント・拡散障害など、酸素を取り込めないことが原因。
2型の原因は、肺胞低換気で、酸素を取り込めず、二酸化炭素も吐き出せないことが原因。
2型の原因としては、
・呼吸中枢の抑制・障害 ⇒脳幹出血、鎮静薬など
・中枢気道の狭窄・閉塞 ⇒異物・腫瘍など
・末梢気道の狭窄 ⇒COPD・気管支喘息(重症)など
・神経・筋疾患による呼吸筋障害 ⇒重症筋無力症・筋ジストロフィーなど
・色々障害されている ⇒肺結核後遺症
などがある。
単純に1型の場合は、吸入酸素濃度をあげればOKだが、2型の場合はそうはいかない。
なぜなら高濃度の酸素投与はCO2ナルコーシスを招くためである。
CO2ナルコーシスとは、呼吸の自動調節機構に異常が生じCO2が体内に蓄積され、意識障害などの中枢神経症状・呼吸抑制が現れる病態
初期症状は呼吸促迫や頻脈、発汗、頭痛など、進行すると意識レベルの低下、傾眠、昏睡
正常ではPaCO2の変動が呼吸中枢へ伝達されるが、慢性的な高二酸化炭素血症があると呼吸中枢はPaCO2の上昇に反応しにくく、PaO2の低下を感知して呼吸を促進させる
そこで高濃度の酸素を投与すると呼吸中枢は酸素が足りていると判断し、呼吸が抑制される
その結果、CO2が蓄積し、CO2ナルコーシスになる
SPO2が低く、呼吸抑制や意識レベルの低下などがあれば、CO2ナルコーシスを疑う。
低流量(1L前後)から酸素投与を開始し、血ガスにてA-aDO2を計算する。
高濃度の酸素を投与すると呼吸停止のおそれもある。
A-aDO2の基準値は5〜15mmHg
A-aDO2 = 150 -PaCO2 / 0.8 - PaO2で計算できる
PaCO2が高く、PaO2が低ければCO2ナルコーシスを疑う。
まずは低流量による陽圧換気(バッグバルブマスクもOK)だが、肺炎などを合併しSPO2が90%以上を保てないような場合は、低酸素血症による不可逆的な障害を予防するためにも適量な流量で投与する。
状態が重篤な場合は挿管による人工呼吸器管理が望ましい。