CLUB馬券@オッズ理論から算出した統計学3連単投資

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一過性意識消失発作(失神)

失神とは、一過性に脳の血流が低下することによって意識消失を来すもの。
通常は数分以内に回復する。通常は脳卒中の発作とは関係なく、完全に意識は回復するため、少しでも認知機能などの障害や、回転性めまい、複視、片麻痺、小脳失調など神経障害が残っていた場合は、意識障害やTIA(一過性脳虚血発作)となる。
なお、神経学的所見もないのに頭部CTを撮ることは基本的にはすすめない。

原因
基本的には最初に上述する神経調節性失神が原因の半分以上を占める。

①神経調節性失神
1.迷走神経反射性失神
立位数分後に循環血液量低下のため心拍出量が低下し、心臓副交感神経の亢進によって過度の徐脈となり、全身の血圧低下を引き起こし、顔面蒼白となって失神を来すもの。過労・疼痛・精神的不快感などが引き金となることが多い。
発作直前に、眼前暗黒感、嘔気、頭重感、頭痛、複視、腹痛を伴うこともある。

2.頸動脈洞過敏性失神
高齢者では、頚部の圧迫や首を回すことによって頸動脈洞が刺激され、迷走神経反射が生じて失神を起こすことがある。 

3.状況失神
排尿、咳嗽、排便、嚥下、息こらえ、嘔吐などに起因する失神です。排尿失神は内蔵迷走神経反射の1つで、排尿によって膀胱が空になることが引き金となる。 

②起立性低血圧
通常では仰臥位から立位になると、心臓への循環血液量が低下し血圧が下がります。この変化に対して直ちに圧受容器反射系が賦活化されて、心拍出量増加、末梢血管抵抗増加などによって血圧が下がることを抑制するが、何らかの原因で循環血液量が低下した状態が続くと、高度の血圧低下を来して失神が生じる。
起立性低血圧の原因は、糖尿病などによる自律神経障害、アルコール・薬剤によるもの、長期臥床・猛暑・脱水などによるものがある。

③心原性失神
1.不整脈による失神(アダムス・ストークス症候群)
房室ブロックや洞機能不全症候群、心室細動・心室頻拍、ブルガタ症候群、QT延長症候群などがあるが、来院時に不整脈を心電図で確認できることは少ない。

2.器質的心疾患
肥大型心筋症、大動脈弁狭窄、心房粘液腫、大動脈解離、心タンポナーゼ、心筋梗塞などの疾患によって失神を生じることがある。

いずれにせよ、心電図検査は必須であるし、外傷・転倒患者には必ず失神エピソードを聞くことが重要である。
また、血液検査で貧血や低血糖の除外、心筋マーカー、BNP、Dダイマーも意識障害を疑うのであれば必要に応じて測定する。
転倒患者、てんかん、SAH疑い、神経症状を有する患者には必須であるが、一過性意識消失発作では適応ではない。

※意識障害の鑑別診断

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輸入感染症(ウイルス性出血熱、デング熱、腸チフスなど)

ウイルス性出血熱
エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱などの病気を指し、いずれも発熱や出血傾向を示し、致死率の高い重篤なウイルス性疾患である。ウイルス性出血熱は、主にアフリカを中心に流行をみる疾患であり、日本における流行はないが、国際化が進む現在の世界において、日本で同様の現象が生じることも考えられ、有事に備えての対策を行うことが重要であるとされている。

原因
ウイルスを媒介する動物や虫としては、エボラ出血熱であればサルやコウモリなどが、ラッサ熱はネズミ、クリミア・コンゴ出血熱では、ダニ、家畜である。

症状
ウイルス性出血熱は致死率が高い
感染後数日から3週間ほどの経過で、発熱や筋肉痛、倦怠感などが現れる。経過中に皮疹がでることもある。
また、皮下出血や消化管出血、目や口などの粘膜出血などが認められたり、重症の場合には血圧低下や意識障害などを呈することもある

治療
基本的には対症療法であるが、ラッサ熱に対してはリバビリンが有効であると言われている。

予防
徹底したスタンダードプリコーションが重要。手洗いを行うことも重要な感染予防策。
アフリカなど流行が疑われる地域では媒介動物や虫への接触を避けることが重要。


デング熱
原因
デングウイルスを持っている蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカ)に刺されることで感染する。人から人へ感染することはない。ネッタイシマカやヒトスジシマカは東南アジアや南アジア、中南米、アフリカなどの熱帯地域を中心に生息している。
ヒトスジシマカは日本国内においても確認されている。

症状
感染してから発症するまでの潜伏期間は、通常3〜7日。

・デング熱の症状
急激な発熱(多くの場合、2〜7日で解熱)
そのほかに頭痛・目の裏の痛み・関節痛・筋肉痛・吐き気・嘔吐
発疹は解熱後に出現し、胸部や胴体・背中からはじまり、手足・顔面に広がる

・デング出血熱の症状
鼻血や消化管出血など
そのほか不安・興奮状態、呼吸苦や腹部膨満感など
さらに重症な状況になるとショック状態や循環血液量減少性ショックなどがみられる

治療
基本は対症療法
重篤な場合は入院治療

予防
蚊にさされないことが重要
流行地域に行く際は、長袖、長ズボンを着用する、サンダルを避けるなど、肌の露出の少ない服装を心がける
ディートやイカリジンという成分が含まれている虫除けスプレーが有効


腸チフス

原因
腸チフスの原因菌はチフス菌で、ヒトにのみ起こる。
便や尿、またそれらによって汚染された手指や食べ物、水などを経口摂取することで感染する
腸チフスが流行する海外への渡航(東南アジア、中南米、アフリカなど)が感染のきっかけとなることが多いものの、輸入された長期保存できる食品がチフス菌に汚染されていた場合にも感染源となりうる

症状
潜伏期間は8~14日間
38~39℃の高熱で、稽留熱(1日のなかで体温の変化1℃以内)という熱型を呈する
下痢または便秘、バラ診(背中やお腹の淡いピンク色の発疹)や、肝臓や脾臓の腫脹がみられる
ときに腸の出血や穿孔を起こすこともある

治療
世界的に広く使用されている抗菌薬は、フルオロキノロン系

予防
予防方法は、徹底した手洗い
また、腸チフスの流行している地域に渡航した際には生野菜やフルーツ、生水や氷を喫食しないように心がける

皮膚・軟部組織感染症

皮膚・軟部組織感染症は「水虫」や「おでき」といった表面に限局した軽度の感染症から、皮下組織や筋膜にまで達する蜂窩織炎、壊死性筋膜炎のように生命予後に関わる重症な感染症まである。
原因菌は黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌が主体となる。

伝染性膿痂疹(とびひ)
皮膚に水疱を形成する感染症で、虫刺されや汗疹などを掻き壊したところに細菌感染を合併して発症する

治療
ポビドンヨードによる消毒やシャワーなどで清潔に保ち、フシジン酸ナトリウム軟膏やセファクロルやセフニジルを内服

予防
掻きむしらないこと。病変部位に触れないこと。

丹毒
浮腫性の紅斑で、突然の悪寒、発熱と病変部の腫脹、熱感、圧痛を伴う。
顔面、下腿に生じることが多い

治療
アモキシシリンの内服。重症例はアンピシリンの点滴。

せつ・よう、毛嚢炎
表在性で毛包漏斗部に限局しているものが毛包炎で、手包下部にも炎症が及び(毛嚢炎)、1つの手包に限局しているものが「せつ」、複数の毛包に拡大したものが「よう」である。

治療
セファクロルの内服

蜂窩織炎
真皮〜皮下志望組織のびまん性の可能性炎症疾患で、四肢特に下肢に多く見られ、歩行困難・時には入院を要する。
発熱といった全身症状と局所の熱感、圧痛・自発痛が主な症状である。

黄色ブドウ球菌やベーター溶血性連鎖球菌が多く、第一選択はセファゾリンであるが、インフルエンザ菌、大腸菌、嫌気性菌でもまれに生じることがあり、糖尿病など基礎疾患がある場合は、カルバペネム系が選択される場合もある。
原因は外傷、炎症、浮腫、血管障害などが多く、皮膚バリアが破綻することで発症するため、原疾患への対処も重要である。

CTによる炎症の範囲やガス産生の有無を調べ、壊死性筋膜炎との鑑別をする。

壊死性筋膜炎
壊死性筋膜炎は、皮下組織と筋膜に急速かつ広範囲な壊死を起こす感染症である。死亡率も高く予後の悪い疾患である。
壊死性筋膜炎は外科的デブリが必要であり、皮膚が一見正常でも、バイタルサインの異常や激しい疼痛を呈していることが多く、所見を見逃さないようにする
抗菌薬以外には下腿の安静、冷却、挙上も必要である。
セファゾリンで改善が乏しければバンコマイシン、クリンダマイシン、ST合剤も考慮する。

麻疹(はしか)

麻疹とは、一般的に「はしか」とも呼ばれ、麻疹ウイルスに感染することによって引き起こされる
一度麻疹ウイルスに感染したり予防接種を受けたりすると免疫ができるため発症することはない

原因
原因ウイルスは麻疹ウイルス
麻疹ウイルスは空気感染・飛沫感染・接触感染などさまざまな感染経路を持ち、非常に感染力が強いのが特徴
特に空気感染は一般的な手洗いやマスク着用などの感染対策では予防することができず、感染者と同じ空間にいるだけで感染するリスクが生じるため、公共施設や学校などでの集団感染が起こりやすい

症状
まず、麻疹ウイルスに感染すると10~12日間の潜伏期を経た後に38℃前後の発熱が2~4日間ほど続き、全身倦怠感、咽頭痛、鼻水、咳、充血、目やになどの症状が現れる
その後いったん熱は下がるものの、半日程度で39℃前後の高熱が現れ、おでこ、耳の後ろ、首などに赤い発疹ができて2日ほどで全身に広がっていく。3~4日間すると徐々に熱が下がっていき、さまざまな症状も改善していくのが特徴。
通常であれば発症から7~10日間で回復するが、重症化すると肺炎や脳炎などを引き起こすケースもある。

検査・診断
麻疹ウイルスに対する抗体の有無を調べるための血液検査は麻疹の確定診断に必要な検査の1つで、IgMやIgG抗体の量を測定する。
咽頭ぬぐい液、髄液、尿などに麻疹ウイルスや麻疹ウイルスの遺伝子が存在するかどうかを調べる検査も行う
肺炎や脳炎などの重篤な合併症が疑われる場合は、疑われる合併症の種類に応じてX線、CT、MRIなどを用いた画像検査が行われる

治療
麻疹ウイルスに対する抗ウイルス薬は存在しないため、治療は発熱に対する解熱剤、喉の痛みに対する鎮痛剤などの薬物療法、高熱などによる脱水に対する点滴治療などの対処療法が主体となる

予防
麻疹ウイルスは非常に感染力が強いため注意しなければならない感染症の1つで、現在では1歳児と小学校入学前1年間の幼児期の2回にわたるワクチンの接種が予防接種法で定期接種として定められている。
そのほか、麻疹ウイルスは空気感染、飛沫感染、接触感染によって感染するため、感染者がいる場合はできるだけ同じ空間を共有しないように注意し、地域で麻疹が流行している場合は人ごみに出歩かないなどの対策も必要。

発熱 (臨床推論)

発熱に関連するバイタルサイン

血圧
血圧の急激な上昇や低下を伴う発熱は、大動脈解離や敗血症など危険性の高い状態の可能性がある。

呼吸回数
呼吸が上がっている場合、一過性のかぜ症候群ではなく危険性の高い疾患の可能性が高まり、特に30回/分以上の場合は重症が示唆される。

脈拍数
発熱と脈拍は相関することが多く、体温が0.55℃上昇すると脈拍が10回/分上がると言われている。

バイタルサイン以外の重要な確認事項

食欲
食欲の確認は非常に重要で、食欲の低下が栄養やエネルギーの不足をもたらす以外にも、血圧にも関連している。

上気道症状
鼻水やくしゃみ、咽頭痛といった上気道症状のみの場合、基本的には危険性や緊急性が低いが、咽頭痛と発熱のみの場合、急性喉頭蓋炎という可能性もごく稀にある。私もERで2回ほど経験した。


発熱以外の症状と関連するおもな疾患

発熱+咽頭痛
上気道にある咽頭の痛みは、頻度は高いものの、かぜ症候群(急性上気道炎)に代表されるように自然軽快する病態が多いが、口腔内があまり赤くなっていないのに喉頭周囲が激しく痛む場合、急性喉頭蓋炎の可能性があり、気道閉塞リスクがある緊急性の高い疾患である。
甲状腺周囲の圧痛は、亜急性甲状腺炎の可能性がある。
一方、咽頭痛の大多数を占める咽頭部の痛みで、鼻水や咳がなくいちご舌など溶連菌の感染や、細菌性感染が疑われる場合は、アモキシシリンやセファクロル、クリンダマイシン、アジスロマイシンなどを処方する。
ウイルス性咽頭炎(扁桃炎)を疑った場合、原因ウイルスは、ライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルスなどがある。アデノウイルス感染症の場合、全身倦怠感や筋肉痛を伴うケースが多い
また、扁桃炎の経過中に片側の扁桃に激しい痛みをきたす扁桃周囲膿瘍や、口蓋垂の後ろにある咽頭後壁が腫れる咽後膿瘍に罹患する可能性もあり、場合によっては緊急処置が必要である。

発熱+呼吸器症状
咳嗽を主訴にした発熱症例の大半はかぜ症候群(急性上気道炎)。基礎疾患のない健康成人では、まずは対症療法としてNSAIDsの投与が基本となる。
呼吸回数20回/分超の頻呼吸や呼吸困難、咳嗽を伴う発熱の場合、肺炎罹患が強く疑われる。
・細菌性肺炎の症状は、湿った咳と膿性痰
・ウイルス性肺炎の症状は乾いた咳嗽や呼吸困難のほか、高熱や全身の筋肉痛
・非定型肺炎の症状は乾いた咳が特徴的
症状発現の2~3週間以内に温泉へ行ったり自宅で循環式風呂を利用した場合、レジオネラ肺炎(非定型肺炎の1つ)の可能性も考えられる。頻度が高いのは肺炎球菌による肺炎。高齢者の場合は症状が乏しいことも多く、倦怠感を訴える程度の場合でも肺炎の可能性は視野に入れる。
咳嗽が2週間以上長引いてさらに血痰を伴う場合、肺結核の可能性が疑ってかかる

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発熱+下痢
発熱に伴う下痢で多いのは、ウイルス性腸炎、細菌性腸炎、食中毒で、いずれも便中白血球や便培養検査で原因微生物を調べないと特定できない。
まず脱水の有無、下痢の持続期間、発熱・血便・テネスムスの有無(便意はあっても便が出ない状態)を確認する。
脱水症状がみられたら、経口補水液または点滴が必要
下痢の持続期間は、2週間未満(急性)、2週間以上4週間未満(持続性)、4週間以上(慢性)に分けられ、急性下痢の多くは一過性で予後良好のため対症療法を。一方、持続性または慢性の下痢症状がある場合は、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患、抗菌薬関連腸炎、過敏性腸症候群、悪性腫瘍、甲状腺機能亢進症といった可能性も考える。

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発熱+皮疹
発熱を伴う皮疹は原因疾患が多岐にわたるが、頻度の高いものとしてはウイルス感染による発疹がある。風疹・麻疹は、流行状況とワクチン接種歴を把握することが鑑別に極めて重要だが、全体の数からすると高くない。

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軽症の薬疹も頻度が高い病態である。
そのほか頻度の高い発熱と皮疹の疾患としては、皮膚の緊張を伴う浮腫や、皮膚の潰瘍、頻脈、頻呼吸、皮膚病変の範囲を越えた痛みなどの症状がみられるいわゆる軟部組織感染症がある。
頻度は低いものの、緊急性が高い疾患としては、電撃性紫斑病、輸入感染症、重症の薬疹などがある。
電撃性紫斑病は、紫斑・点状出血が出現して急速に進行する病態で、多くは敗血症を呈しているため、バイタルサインのチェックが重要である。
1カ月以内の海外渡航歴(特にアフリカ、アジア)がある患者さんの皮疹と発熱は、ウイルス性出血熱、デング熱、腸チフスなどの輸入感染症を考える。
全身の発疹に加え、口腔や眼の粘膜にも病変が出現している場合は、重症の薬疹を疑う。原因となりやすい薬剤としてアロプリノール、抗てんかん薬(特にカルバマゼピン)、抗菌薬(サルファ剤)が知られている。

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薬剤熱
薬剤熱とは、「薬剤の投与に関連して発生し、薬剤の中止後に消失するものであり、身体診察や検査所見にて原因が明らかでないもの」。
発疹がみられれば薬剤熱の可能性を探りやすくなる。ペニシリン系抗菌薬やセフェム系抗菌薬が処方されている場合、薬剤熱の可能性が高まるため、処方薬の中止や変更の可能性も視野に入れる。

発熱+関節痛・背部痛・腰痛
関節痛を伴う発熱をきたす疾患は、感染性関節炎、痛風、偽痛風、関節リウマチ、成人スティル病、リウマチ性多発筋痛症など多岐にわたる。
背部痛や腰痛に発熱を伴う病態の多くは、特別な治療が必要のないウイルス感染などの感染症によるもので、鎮痛剤や湿布剤などで治療することが一般的。
しかし発症時刻が特定できるほどに突然痛みが発症した場合、血圧上昇がみられれば大動脈解離、血尿を伴えば尿路結石が疑われる。
発症から数日程度の急性の痛みの場合、咳嗽があれば急性肺炎、胆石があれば急性膵炎、膿尿があれば急性腎盂腎炎の可能性が考えられる。
慢性的な痛みが続くケースでは、体重が減少していれば悪性腫瘍が疑われ、糖尿病・慢性腎臓病・アルコール依存といった基礎疾患があったり経静脈麻薬を常用していれば腸腰筋膿瘍の可能性もある。

発熱+泌尿器症状
排尿時痛、残尿感、下腹部痛、頻尿、尿混濁、血尿といった膀胱炎の症状に発熱を伴う女性は腎盂腎炎の可能性がある。
腎盂腎炎は女性に多い疾患で、同じ症状が男性にある場合は急性前立腺炎が考えられ、肛門周囲の不快感、下部腰痛などがみられる。
このほか、精巣上体炎や腎膿瘍、腎周囲膿瘍といった疾患の可能性が考えられるが、いずれの疾患であっても適切に抗菌薬による治療を行う。

発熱の鑑別疾患
・血管性疾患:肺塞栓症
・腫瘍性疾患:リンパ腫
・先天性疾患:家族性地中海熱、TNF受容体関連周期性症候群 (これらは稀)
・アレルギー・自己免疫性疾患:全身性エリテマトーデス、成人発症スティル病
・内分泌代謝性疾患:亜急性甲状腺炎、甲状腺クリーぜ、副腎クリーぜ
・精神疾患・心因性:許病、虚偽障害

高熱を呈する代表的疾患
・感染症:インフルエンザ、結核、腎盂腎炎、胆管炎、レジオネラ感染症
・腫瘍性疾患:リンパ腫、腎癌、肝細胞癌
・自己免疫性疾患:成人発症スティル病

不明熱の診断
・体重減少:結核、癌、HIV/AIDS
・咳嗽+体重減少:結核
・咳嗽:結核、高安病(血管炎)
・頭痛:巨細胞性動脈炎、顎跛行、視力障害
・上腕から肩にかけての痛み・こわばり:リウマチ性多発筋痛症
・咽頭痛:成人発症スティル病、亜急性甲状腺炎、レミエール症候群
・頸部痛:髄膜炎、リウマチ性多発筋痛症、亜急性甲状腺炎、レミエール症候群
・腰痛:骨髄炎、癌
・下肢の痺れ:血管炎(タンパク尿、血尿の有無を確認)
・難治の中耳炎:顕微鏡的多発血管炎

発熱に加えて
・比較的徐脈:腸チフス、マラリアQ熱、ブルセラ症、黄熱、髄膜炎、腎細胞がん、リンパ腫、中枢神経の腫瘍
・血痂:ツツガムシ病
・診断のつかな扁桃炎:急性HIV感染
・関節痛・関節炎:偽痛風、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、血管炎、成人発症スティル病、サルコイドーシス、ベーチェット病、炎症性腸疾患
・白血球減少、リンパ球減少:全身性エリテマトーデス
・血小板増多:リウマチ性多発筋痛症、巨細胞性動脈炎、高安病
・異型リンパ球:伝染性単核球症、トキソプラズマ症、ブルセラ症、マラリア、ツツガムシ病

ギランバレー症候群

ギラン・バレー症候群とは
末梢神経が障害されることによって脱力・しびれ・痛みなどの症状が引き起こされる病気のこと。
末梢神経はさらに、運動に関わる運動神経・感覚に関わる感覚神経・身体の機能を調節する自律神経に分類されるが、これらの神経に異常が生じることによって発症すると考えられている。
原因は、ウイルスや細菌による感染をきっかけに起こる免疫反応が自身の末梢神経を攻撃することによるものと考えられている。
全年齢で発症する可能性がある病気。

原因
ギラン・バレー症候群患者の3人に2人は発症の1~3週間前にカンピロバクター、サイトメガロウイルス、EBウイルスなどの感染症にかかった既往があるとされている。そのほかにも、インフルエンザなどのワクチンやコロナ感染によって引き起こされるケースも報告されている

症状
下痢・風邪症状や発熱などの症状が生じて1~4週間後に手足の力が入りにくくなっていくのが典型的なパターンで、多くは、足の力が入りにくくなり、徐々に腕にも脱力が広がっていき、階段の上り下りができない・布団の上げ下ろしができないといった症状が現れる。また、脱力と同時にしびれや痛みが生じるケースもある
重症なケースでは、顔の筋肉や目を動かす筋肉、物の飲み込みに関わる筋肉にも麻痺が生じることがあり、中には呼吸に関わる筋肉が麻痺して呼吸困難に陥ることも少なくない
ギラン・バレー症候群は突然、前述のような症状が現れるが、多くは発症後4週間ほど経つと徐々に改善に向かい、半年~1年ほどで元の状態に戻っていく。

検査・診断

血液検査
末梢神経の異常を引き起こす糖尿病などとの鑑別をする目的で血液検査が行われる。また、ギラン・バレー症候群患者の60%の血中には末梢神経の成分を攻撃する抗体が存在するとされているため、この抗体の有無を調べる。

画像検査
脳や脊髄などの中枢神経の異常による症状との鑑別をするため、CTやMRIなどによる画像検査が行われる。

末梢神経伝導検査
末梢神経の電気的な活動が伝わる速さを測定することで、末梢神経が正常に機能しているか調べることができる検査で、ギラン・バレー症候群では、電気的な活動が伝わる速度が遅くなったり、伝わらなくなったりする部位が生じるため、診断の大きな手がかりとなる。

髄液検査
腰に針を刺して髄液を採取し、髄液中の細胞を詳しく調べる検査で、ギラン・バレー症候群では髄液中のたんぱくが増加し、細胞数が正常といった変化が生じるため、診断に役立つとされている。

治療
ギラン・バレー症候群は特別な治療をしなくても自然に軽快していくケースが多いとされており、重症化の場合は以下の治療を行う。

血液浄化療法
血液中の有害な物質を取り除いて体内に戻す治療法で、症状が軽くなり、回復が早くなる。

免疫グロブリン大量静注療法
原因となっている免疫反応(抗体)を抑えるため、大量の免疫グロブリン製剤を点滴で投与する。

シェーグレン症候群

シェーグレン症候群

免疫のバランスが崩れ、涙や唾液を産生する涙腺・唾液腺などの臓器を攻撃し、ドライアイやドライマウスを主にきたす病気のこと

自己免疫性疾患(免疫異常によって自分自身を攻撃してしまう)の一種であり、全身の関節、肺、皮膚、消化管、腎臓などにダメージが及ぶこともある

発症すると目や口の乾燥が目立つ

多くの人は症状とうまく付き合いながら治療の必要なく生活しているが、一部の人には腎臓、肺、皮膚などにも病変が現れ、まれに悪性リンパ腫が見られたりする

関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどほかの自己免疫疾患に合併する二次性シェーグレン症候群もある

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全身性エリテマトーデス(SLE)

全身性エリテマトーデス (SLE) とは
自分の免疫システムが正常な細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫性疾患の1つで、全身の臓器に炎症や組織障害が生じる病気。
指定難病の1つであり、男女比は1:9。妊娠可能な女性に起こりやすく、女性ホルモンが発症に関与すると考えられている

原因
原因は明らかではないが、遺伝素因に環境要因が加わり、複合的な要因で発症する自己免疫疾患と考えられている。
自己免疫とは本来、細菌やウイルスから身を守る免疫系が自分自身に対して起こる反応である。
遺伝的要因も発症に関与していると考えられているが、それ以外では性ホルモン、紫外線、ウイルス感染などの環境要因が関わって発病すると考えるのが妥当といわれている。

症状
悪化したときには発熱、全身の倦怠感など全身症状とともに多彩な症状が現れる。

皮膚症状
蝶形紅斑(バタフライラッシュ)は全身性エリテマトーデスに特徴的で、蝶形紅斑とは、顔に蝶のような形の発疹が出現する皮膚症状のことである。このほか、円板状に盛り上がった紅斑、光線過敏症や脱毛が半数以上の患者さんに認められ、痛みを伴わない口内炎が生じることもある。

関節痛や関節炎
特に病初期に頻度の高い症状で、左右対称に多関節に生じる。関節リウマチのように変形をきたすことはない。

腎臓に生じるループス腎炎
約半数の患者に、ループス腎炎と呼ばれる腎臓の病気が現れる。初期にはたんぱく尿など尿検査の異常だけで特に自覚症状はないが、進行に伴って顔や足のむくみが出現するようになる。腎臓に炎症が続くと徐々に腎機能が低下し、適切な治療がなされない場合には腎機能が破綻し、透析療法や腎移植が必要になることもある。

その他の症状
胸膜炎や心膜炎が発症したり、けいれん、精神症状、脳血管障害などの中枢神経が障害されたりすることもある。

検査・診断
血液検査が必須で、白血球や血小板の減少、貧血が認められる。また抗核抗体が陽性となる。疑われる場合には、さらに抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗カルジオリピン抗体などの病気に特徴的な自己抗体を確認する。
さらに、診断、重症度の評価のためには尿検査、画像検査、場合によっては病理検査や腰椎穿刺検査で、心臓・腎臓の障害、関節炎、胸膜炎、心膜炎、消化器病変、中枢神経病変など各臓器の障害の程度を調べることも重要。

治療
一般的な治療薬は副腎皮質ステロイドで、長期使用による副作用が懸念されるため、重症度に応じた用量の調節が重要。特に重症な場合には、副腎皮質ステロイドを点滴で大量投入するパルス療法が行われる。
また、副腎皮質ステロイドの効果を高めること、または副腎皮質ステロイドの減量を目的に免疫調整薬、免疫抑制薬、分子標的薬を併せて用いることがある。特にループス腎炎や中枢神経障害などの重症例に対しては初めから免疫抑制薬を併用し、これを軸として早期に寛解を目指す。